魅力というスキル
仕事をする上で求められるスキルと、高校や大学で教えられる教育には、ままギャップがあります。特によく言われるcommunication・documentation・presentatoinの技術は、関わりのあるような基礎的学習はするものの、具体的な交渉術や、企画書づくりや、あるいは商品の見せ方といったことは学校では教わりませんでした(今はどうなんでしょう)。
しかしながら先日、これらよりもっと重要なものを、私たちは教わらなかったのだなと、つくづく気づくことがありました。とあるオリンピック選手の講演会を取材していた時のこと。彼は今月で引退し、今後は指導者としての道に進むということで、「スカウトしたい選手」の条件に「魅力的であること」を挙げたのです。
なるほどぉ、と深く腑に落ちました。交渉力、文章力、表現力はスキルとして認められている一方で、魅力は、スキルというよりは「ないならないで仕方がないね」という、ただの性格(パーソナリティ)として思われていないでしょうか。
商品開発にしても、イベント企画にしても、それを担当する人間の魅力は、現実として成功を大きく左右します。これも立派なスキルだと考えます。
では魅力というスキルは、教育などで向上できるものなのか。魅力的な人を見渡すと、私なりのひとつの私案が見えました。
魅力というのは、「個であることを尊重する力」ではないかと。
自己と人とを比べず、人と人とを比べず、自己肯定感が高く、他者への評価もフェアな人。同調圧力を意に介さず、人と異なることを恐れず、また、異なる人を遠ざけない人。
そしてどこまでも「個である自分」を大切にしたり、その意志を発言するには、「深い知性と勇気」が必要です。なぜなら世の中の空気に合わせたり、同調圧力に従うことは思いのほか気楽で、ただし息苦しい。それに抗い、自由に生きるには、個として理論的に考え抜いた上で、相手が納得できるように発言する必要があるからです。
イノベーションが起きにくい日本になってしまった根本原因を問い直す時にきているのではないかと感じています。学校現場で踊る「みんな仲良く」「人の和を大切に」という言葉はもちろん大切です。お互いの立場を尊重している限りは。個を押し殺して同調を強いる言葉として子どもたちに伝わらないことを祈るばかりです。
一方の私は、やっぱり人の目は気になるし、まだまだ。魅力的な会社になるよう、がんばります。